ミノルは知っていた

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夢の影響で散歩に出たマナブだったが、三十分もしないうちに何の目的もなく歩くことに飽きていた。財布を取り出して中身を確認すると数百円残っていた。今月はあまり遊びに行かなかったせいか、一ヶ月分のお小遣いの殆どが残っていた。 「そういや先週鉛筆買っただけだったなぁ」 マナブは財布をポケットにしまって何も考えずに角を右に曲がった。 暫く歩いていると、幼く高い声が聞こえてきた。マナブはふと顔を左に向けた。 「るる公園…最近遊んでないな」 見上げると電線で雀が囀っている。近くの電信柱の変圧器の近くには烏がとまって鋭い目つきで地面を睨んでいる。聞き慣れた鳴き声がして左に顔を戻すと、公園の茂みには地域の子供にるると呼ばれている野良猫が幼稚園ぐらいの子供に撫でられていた。 「あら、蛙。最近多いわね」 「可哀想、車に轢かれちゃったのね」 「あんま見ない方がいいわよ」 奥様方がそう言って公園の中へと入って行く。不意に後ろからぶつかられて振り向くと自分と変わらないぐらいの男女数人組が犬を連れて駆け抜けていった。 「謝れよ、まあいいけど」 マナブは気を取り直して再び歩き出した。暫くするとマナブは不意に声をかけられた。
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