ミノルは知っていた

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そちらを向くと、駄菓子屋のおばちゃんがにっこり笑って手を振っていた。 「あらマナブちゃん。元気?」 「あ、おばちゃん。元気だよ」 手を振りかえして折角だから何か買っていくか、と思ったところだった。 その音は大きすぎてどう表すべきか迷うほどだった。一番近いのは『ファーーーーーッ!!!!!』だろうか。マナブは驚いて身を竦めた。 「危ないだろう!信号は守るためにあるんだ!」 どうやら乗用車のクラクションだったらしい。運転手のおじさんが誰かを叱っている。マナブは少し歩いて様子を伺った。 「分かったな、いいな!?」 「…すみませんでした」 「…ミノル!?」 萎れるわけでもふて腐れるわけでもなくただ淡々とした口調で謝罪したのはマナブのクラスメイトのミノルだった。ゆっくり横断歩道を渡ってきたミノルのところへ駆け寄ったマナブはさっきまですっかり忘れていた今朝の夢を思い出した。なぜかひどく納得して、マナブは逆にはしゃいだ様子でミノルに話しかけた。 「ミノル大丈夫?ね、俺さ、今朝夢見たんだけどさーー」 「それが今の状況と一致していて正夢だったって言いたいんだろ?知ってるよそんなこと」 「……え?なんで?」 話を遮られてむかつく前にマナブは不思議に思った。ミノルは普段から不思議な雰囲気の少年だが、超能力なんて持ってるわけがないということはマナブにも分かっていた。 「知ってて当たり前だろ?ま、お前には関係ないか」 「関係ないってどういうことだよ、ミノル」 流石にマナブも苛立ってそう言うと、ミノルは気にした様子もなく軽く手を振って去っていった。マナブはその後ろ姿を呆然と見つめていた。
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