第二章 それぞれの場所で

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 古くから芸術の街として栄えてきたゲリシェには今でも多くの歴史的建造物がある。その多くがゲリシェの北部(赤道付近)にあり、その乾燥した気候より石と土でできていた。そこに施された彫刻は世界一の美しさと言われている。それらの立つ地域より少し南には熱帯雨林、広葉樹林と大きな森林があり、その中で今は数少なくなってきている先住民族が暮らしている。さらに南、少ししかない温帯の地域には大きな都市があり、さらにその南、大陸の端の方には平原と針葉樹林、山脈がある。そしてその寒い上空を一人の男が飛んでいた。 「最近寒いところばっかりだな…」  眼下には雪をかぶった針葉樹林がある。時刻は深夜零時少し前、もうすぐ定時報告の時間である。 「俺夜行性になりそう…」  小さく欠伸をしたライはチラリと腕時計を見て無線を入れた。 「こちらMS‐一五。定時報告です」  しばらく応答がなく、ライが眉をひそめた時、 『…ごめん忘れてた。こちらMS‐一。定時報告、了解。そちらの状況は』 「…状況は良好。人々は眠り、雪が…あっ…あ、すみません、えっと只今雪が降り始めました。本日も積もる予定。…氷水の気配なし。繰り返す、氷水はいない。以上」 『今どこだ? ゲリシェ南部か』 「南部山脈手前雪原西側針葉樹林上空。もうすぐ山脈。小屋に戻る予定。何か問題でも?」 『いやちょっとな…』 『割り込み失礼緊急事態ですっ!』  突然の大声にライが顔をしかめる。 『…どぉした…』 『すみません只今ガナル担当の交代のため列車に乗っているのですがっ…』 『いいから落ち着け。記録係りがメモとれん』 『あ…はい。それでですね、あ、こちらMS‐十七なんですが、それで、その列車に…に、忍者が、同乗していまして…。同じコンパートメントなんですけどっ!?』  半ば八つ当たりになった声に冷静な声が応答する。 『で? それで?』 『課長おおぉぉぉっ!』 「うるさい。割り込み早くしろ」 『先輩いいぃぃぃっ!』
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