第一章 ライアルとシェリィ

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「いや…久しぶりにリアン語話したよ。それにああいうしきたりがあるのもリアンぐらいだし。社交辞令ならあるけど、一般的には言わないし」  シェリィの隣に座ったライはそう言って笑った。 「たまにはいいでしょ」 「たまにはね」 「ライは最近どう?」  紅茶に砂糖大盛り二杯を入れたシェリィはかき混ぜながら言った。 「うん、ガナル語を勉強しているかな」 「ガナル語を?」 「うん。うちの課長、ガナル人でさ。話せたら便利かなって」 「真面目ね。サムスみたい」  サムスか、と呟いて紅茶を一口飲んだ。 「あいつ、どうしてる?」 「上忍になって班を抜けて幹部。最近忙しいみたい」  シェリィは溜息をついて足元に目を落とした。 「私は未だに中忍。ライの後に入ったルーメイにも抜かれるし…」  ライは何故か居心地が悪くなってシェリィから目をそらした。 「シェリィ? どうして俺の居場所が分かったの?」  話題をそらしたライにシェリィは弱く笑っただけだった。 「…今、思ったんだけど」 「何?」 「トゥ先生には言って来たの?」  明後日の方向を向いて紅茶を飲んだシェリィにライは溜息をついた。 「怒られるのは俺じゃないけどね? いい? 俺がここにいるのは秘密なんだよ? シェリィ?」 「大丈夫だって。どこに行くかは言ってないけど、ルーメイには出かけるって言ったし」 「時差考えようね? もう朝だよ、リアンの里」 「……」  冷や汗が流れた。シェリィは乾いた笑いをたて、 「やっべぇ…」  そう言った。 「バカ」 「う、うるさいっ」  とりあえずコート類を手に取ったシェリィは紅茶を飲み干した。 「やばい、朝礼始まっちゃう!」 「あと何分」 「二十五分! うわ~~」  ライは少し考えてから杖を手に取った。一振りすると、二つのカップやハンガーが片付けられ、カーテンがしっかりと閉まった。 「飛ぶよ」 「…へ? トブヨ?」
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