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理解できてないシェリィをおいてライは外へと出た。そして、一本の箒を持ってきた。
「少し風が強いけど雪は降ってない。…乗って」
浮いた箒に恐る恐るまたがるシェリィ。
「…怖い。これ、本当に飛ぶの?」
「そうだよ」
ライは慣れたように乗り、シェリィを振り向いた。
「手、離さないようにね。それと今更だけど…」
「え?」
「その髪型も似合ってるよ」
シェリィが何かを言う前にライは床を蹴った。そして開いているドアから外に飛び出し、すぐ体を捻って杖をドアに向け、ドアを閉めた。
「落ちる落ちるっ!」
「大丈夫だ。…行くぞ」
「ぎゃああぁぁッ」
プライベートで許せる範囲の人だけがいる所でないと声色…口調が厳つく太くなるライの声を久しぶりに聞いたと思う前にシェリィは叫んでいた。
「ちょっと、ちょっとぉ! ライ! 速い! 落ちちゃうっ!」
ライの胴にしっかりと腕を回してしがみついているシェリィは急に暑くなってきたのを感じた。
「ライ…?」
「暑かったら上脱げ。もっと暑くなるぞ」
「そう言われても! 落ちる!」
シェリィの涙声を無視してコートのボタンを開けてシャツの第一ボタンをはずしたライは少し速度を落とした。シェリィはそれに気づかない。
「ライ、ライッ! 暑いけど落ちる、落ちるけど暑い! う~~」
「ああもうウルサイッ」
いい加減にしろ、と言うように振り向くと、シェリィの額には大粒の汗が光り、頬は真っ赤になっていた。ライは溜息をついてシェリィと向き合った。
「ちょっと、お――」
落ちるでしょ、と言いかけたシェリィは口をつぐんだ。ライがハンカチで汗を拭き、コートを脱がせてくれ、さらにマフラー類も全て取ってくれたからだ。
「自分で持て」
「でもっ落ちる…」
ライはまた溜息をつき、そして、そっとシェリィを抱きしめた。シェリィは頭が一瞬真っ白になり、それから目をしっかり閉じた。
「大丈夫。怖くない」
心の奥で声がしたような気がして、シェリィが顔を上げると、ライはもうもとの状態に戻っていた。シェリィは小さく笑って額をライの背中に当てた。
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