あたしと先輩の夏休み最終日

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「あれ? 葉瑠先輩それって……」 彩菜は微糖とうたうには余りに甘すぎる珈琲の脱け殻をくわえたまま、ポッキーの箱を開けながら呟いた。葉瑠先輩は名前を呼ばれ「……ん?」と軽く唸った後、あぁこれか。と今リリースしたばかりのそれをもう一度手に取り、指を器用に動かしてぐるりと一周回してみせた。 「うん、日記帳」葉瑠先輩はそう呟き、「私にもよこせー」と言いながら伸ばした手でポッキーの銀袋をひとつかっさらっていく。「あぁ、あたしのお菓子……」という嘆きも虚しく120円の半分が先輩権限により彼女の元を巣だっていってしまった。 「お菓子はみんなで食べるから美味しいのだよ、彩菜ちゃん」戦利品のポッキーを顔の横で振りながら嬉しそうに笑う葉瑠先輩を見て、なんだか横のポッキーも、こんな美人に食べてもらえるなんて。とデレデレとしているような気がした。 どんな顔をしていたのか分からないが「もう、お菓子を取ったくらいで泣かない泣かない」と葉瑠先輩がデレデレポッキーを口の中にお迎えしながら言ったものだから、彩菜は「お菓子とられたくらいで泣きませんー!」と唇を尖らせて答えた。 「あぁ分かった分かった。ほらこれあげるから泣き止んで」子供っぽく悪戯に笑いながら葉瑠先輩はプリントの海に日記帳を投げ入れた。生憎沈むことはなかったが「だから泣いてませんってー!」と言いながらただちに救出したそれは、彩菜がずっと欲しい欲しいとアプローチを続けていたものだった。
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