~七海~

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「転校生の七海さんだ」 野太く低い声が私の名前を呼んだことで、ハッと我に返る。 隣に立っていた先生が、勢い良く私の名前を黒板に書き出した。 カッ、カッ、と小気味よいチョークの音が私の名前を白で描く。 「七海」と書いて「ナナミ」と読む。 私、自分の名前が好き。 だから、パパとママが離婚した時も、迷わず「七海」を選んだ。 度重なるママの浮気が原因でもあるけど、私はパパについて行くことにした。 だって、私は一人だけの「七海」なんだから。 ずっと、ナナミで生きてきたんだから…。 私は「七海」でいなければならない。 そう強く思ったから、私はママを突き放した。
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