序章

5/8
前へ
/47ページ
次へ
「九郎殿、お逃げください。」 義経が住んでいた高館に来たのは、秀衡の三男忠衡でした。 義経たちは頼朝と戦う準備をしていました。 「ついに鎌倉が攻めてきたのですか。」 「違います。国衡殿たちが、九郎殿を引き渡せと兄泰衡に迫り、今ここへ兵が向かっています。」 「なんと。秀衡様の遺言を破るつもりか。」 義経の郎党たちも驚きました。 「それが泰衡殿の決断ならば仕方あるまい。」 義経は悲しみ、諦めて言いました。 「いいえ。私は兄泰衡に九郎殿と逃げるようにと命じられました。」 「そんなことをしては泰衡殿はどうなる。」 「兄たちには九郎殿に逃げられたと報告するつもりです。」 「それでは泰衡殿はただではすまない。」 皆しばらく黙っていました。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加