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「九郎殿、お逃げください。」
義経が住んでいた高館に来たのは、秀衡の三男忠衡でした。
義経たちは頼朝と戦う準備をしていました。
「ついに鎌倉が攻めてきたのですか。」
「違います。国衡殿たちが、九郎殿を引き渡せと兄泰衡に迫り、今ここへ兵が向かっています。」
「なんと。秀衡様の遺言を破るつもりか。」
義経の郎党たちも驚きました。
「それが泰衡殿の決断ならば仕方あるまい。」
義経は悲しみ、諦めて言いました。
「いいえ。私は兄泰衡に九郎殿と逃げるようにと命じられました。」
「そんなことをしては泰衡殿はどうなる。」
「兄たちには九郎殿に逃げられたと報告するつもりです。」
「それでは泰衡殿はただではすまない。」
皆しばらく黙っていました。
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