序章

6/8
前へ
/47ページ
次へ
「この喜三太が、殿の代わりになりましょう。背格好は殿と変わりません。屋敷を燃やせば気付かれることもないでしょう。」 「何を言うのだ。私は誰も失いたくないのだ。」 「そんな優しい殿だからこそ、喜三太は命をかけてお守りしたいのです。」 「早く、行きましょう。」 忠衡が言います。 「行くならば皆でだ。喜三太もだ。」 「殿、我らはここで敵を迎え討ちます。殿は萌殿とお行きください。」 「弁慶まで何を言うのだ。」 弁慶も他の郎党も、義経が逃げたことを気付かれないように、最後まで戦うつもりなのです。 「私もここに残ります。私は足手まといになります。泰衡様、忠衡様のお気持ち、無駄になさらぬよう。」 「萌まで何を言うのだ。」 「生まれ変わっても、殿の郎党にしてください。」 と弁慶が言えば 「私も、来世でも義経様の妻になりとうございます。」 と萌姫も言いました。 萌姫は義経の正妻として、命をかけて九郎義経を守ろうと決めたのでした。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加