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私の鼓動は各務との位置が離れてようやく静かになる。絵を見ながら私は各務を目で追っていた。他の客とも情熱的に話す風でもなく、サラリとした風のように振る舞う各務。
最後の一枚まで眺めて、出口に向かう。何か背中に当たった気がして振り返ると各務がこちらを見ていた。
「……」
再び鳴りだす鼓動……。そして各務から目が離せなくなる。不自然に立ち止まった私に気付いた先輩は振り返り、私に声を掛ける。先輩もこちらを見ていた各務に気付いて会釈をした。
「さあ、行こう」
私は断ち切るように各務から目を逸らして、会場を後にした。
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