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翌々日。私は先輩を誘って高崎に出向いた。
「婚約早々、デートに誘ってくれるのは嬉しいよ」
「そう言っていただけると。急にお誘いしてすみません」
「可愛いね、ワンピース」
「ありがとうございます」
「お洒落してくれたのも嬉しい」
高崎線快速、電車に揺られて会場を目指す。お洒落したわけでは無かった。これから絵を買いに行くのに足元を見られたくなかっただけ。イベントホールで行われる個展は今日が初日。
「で、高崎で何をするの?」
「あの……。言いにくいんですけど」
「遠慮しないで。これから夫婦になるんだし」
「はい。絵を買いたいんです」
「絵?」
「はい。こないだ中田さんと見に行った水彩画の……」
「あ、ああ。各務さんの?」
「はい」
先輩は少々、渋い表情をした。大宮の個展で向日葵の絵を見て金額に溜息をついていた。10万円の小さな絵、それでも抵抗はあるだろう。でも私が欲しいのは、その10倍の金額。いや、それ以上するかもしれない。
「そんなに気に入ったの?」
「ええ。あの青い色彩がとても……。中田さんは素敵な絵だと思わなかったんですか?」
「いや。とてもいい絵だった」
私はやや挑発的に言った。100万円も支払わせるのだ、そのくらいの勢いが無ければ買ってはもらえない。
「結婚したら新居や養育費でいっぱいいっぱいだと思うんです。絵を買う余裕なんて無いから……今のうちにと思って」
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