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「あ、ひょっとしてこないだ言ってた……家具じゃないけど家に置きたいものって」
「はい。結納金で買いたいんです」
「そう……」
先輩は私から視線を外して通路の床を見た。結納金という言葉に金額を想像したと思う、一桁の位ならわざわざ結納金を使う必要なはい。そのくらいなら社会人2年目の私にも出せるし、ローンだって組める。敢えて先輩を連れて個展に向かうのだ、先輩にも伝わったと思う……私がどれだけ高額な品物を買いたいのかって。
「部屋に絵があると見栄えもすると思うんです。誰かお招きしたときにも箔が付くっていうか」
「まあ……そうだね」
「勿論中田さんにも見ていただいて気に入った絵を。そうして飾った絵を二人で眺めたいんです。自宅でソファに掛けてゆったりとした時間を過ごしたいんですけど……駄目ですか?」
私は隣に座っている先輩を見上げた。上目遣い。それに気付いた先輩は少し頬を赤らめる。
「ああ。分かった。でも買った絵はどこに置くの? すぐに結婚して新居を構えるってことじゃないし」
「そうですね。当面は私の部屋に置かせていただいてもいいですか?」
「それは勿論」
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