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「あらお嬢さん、ずっと下を見てるけど、各務のこと意識してるの?」 「いえ。そんなことは」 「そう?」  意識……。ひょっとして私は……。思い切って顔を上げた。各務を見る。若干斜めに傾いたツバのある帽子、その陰からのぞくように私をうかがう瞳。駄目だ……また動けなる。さっき先輩に手をつながれたときには何にも感じなかったのに。特に意識もしなかったのに。でも各務に掴まれた手首は未だに熱い。  私は……。私は……。 「意識してません。私は各務さんの描く絵が好きなだけで……。それに」 「それに?」  違う。私は各務を意識してはいない。だって、叔父なのだ。ただの叔父。最近、血縁関係にあるヒトがいると知って意識しているだけだ。男性として見ている訳じゃない。 それに私は先輩がいる。 「結婚しますから……彼と。だからそんな失礼なことは言わないでください!」  私はそう言い放って会場を出た。
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