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 イベントホールの外に出て目の前のベンチに座り込む。私の心臓は高鳴ったままだった。  多分、私は各務を好きだ。でもそれは小学生が担任の先生を好きだというのと、父親を好きだというのと同じ感覚だと思う。親しみとか、尊敬とか、大人への憧れとか、そういう感情だ。決して恋愛感情ではない。 「河合、どうした?」 「いえ。迫力のある絵を見てたら圧倒されてしまって」 「疲れた?」 「はい。ちょっと」  何か飲もうか、と先輩は近くの自販機にいく。私はこの人を結婚する。仮に私が各務を好きだとしても、相手は叔父なのだ。3親等の血縁。 「久保田さんが河合と連絡を取りたいって。大きい絵を買うならアトリエの方が数があるから見に来るといい、って」 「アトリエに……」 「前橋らしいんだけど。個展の開期中は忙しいから今日は無理だけどって」  各務のアトリエ。あの洋館。 「そうですか……」 「俺はあの向日葵畑の絵でいいと思うけど」  勿論、あの向日葵の絵がいい。けれどここで決めてしまったらアトリエには行けない。咄嗟に、私は首を横に振った。 「でも……大きな買い物だからいろいろ見せていただいた方がいいと思うから」 「今日手付け金を支払っておかないと、売れてしまうよ?」  
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