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 買い物を終えて部屋に戻る。先輩は浴衣に着替えていた。私も和室で着替えて着ていたワンピースをハンガーに掛けた。夕食は部屋食、仲居が和室に料理を運び入れる。豪華な料理に舌鼓を打ち、日本酒も進んだ。食事を終え、仲居たちが片づけに来る。先輩は部屋で飲むのに赤ワインをボトルで、あとつまみをなにか、と彼女に頼んだ。片付けの邪魔になると思い、私はベランダに出た。先輩も来る。浴衣に羽織り、袖や裾から冷たい空気が入り込む。 「寒くないか?」 「少し。あの、こんなに素敵な部屋、きっと宿泊代が」 「ああ、俺が出すから気にするな。泊まろうって言い出したのは俺だし」 「ありがとうございます」  私の肩を抱き、額にキスをする。 「なあ、河合……今夜」  返事に戸惑っているとベルが鳴る。ワインが届いたのだろう。先輩は部屋に戻り、それを受け取るとミニカウンターへ行く。私も部屋に戻った。仲居は和室で布団の用意をしていた。 「河合も飲む?」 「はい」  先輩は引き出しからコルク抜きを出してワインを開けた。棚からワイングラスを取る。大振りの、薄いガラス。そこに3分の1ほど注いでグラスを差し出す。私はカウンターのスツールに腰掛けた。乾杯するのも怖いくらいに薄いそれを持ち、軽くグラスを傾けて縁を合わせた。布団を敷き終えた仲居が私たちに挨拶して下がる。さっきまで食事をしていた部屋に敷かれた布団は二つ。
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