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 ワインも飲み終えて空になる。私は立ち上がってカウンターの内側に回り込み、グラスを洗った。先輩は、もう一度温泉に入ると言って部屋を出て逝く。私は部屋の浴室で軽くシャワーを浴びた。  目をつむると各務の顔が浮かび上がる。向日葵が触ってと私に囁く。そして手首が熱くなる……。無意識に彼の残像が私に迫る。鼓動が速くなる。それはきっと、僅かな時間でも同じ空間にいたい、と願う現れかもしれない。各務に、どうしようもなく各務に惹かれている……。  浴衣に袖を通し、布団の敷かれた和室に入る。手前の布団に潜り込む。明かりはつけたまま、それは先輩がまだ帰って来ないのもあるが、暗闇にしてしまったら、また各務の姿を描いてしまう。それが怖くて私は明るくしていた。玄関のドアが軋む音がして、先輩は和室に入ってきた。襖を閉めて壁のスイッチで明かりを消す。先輩は奥の布団に向かうことなく、私の布団を軽く剥いだ。腕枕をするように腕を私の首の下に差し込み、私を上から見つめる。そのまま顔を近づける。私は目をつむった。触れる唇。同時に首筋に何かが這う。 《ワタシヲサワッテ……》  向日葵……? 各務……? 「河合?」  私は先輩の手に自分の手を重ねた。
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