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その日、短いながらも長期休暇。つまり、夏休みをもらえた、私[喜々津、キキツ]は父親の墓参りをしようと思い至った。
手持ち無沙汰というか、暇を持て余していたし、お盆も近かったことからのなんとなくな発想で適当に花と煙草を買って、霊園の父の墓に女の子が座っていた。白いワンピースにサンダル、麦藁帽子を被った女の子が墓石のてっぺんに座りブラブラと両足を動かしながら。
「とーらゃんせ、とうりゃんせ、こーこはどこの細道じゃー天神様の細道じゃー」
歌い、手元に持った日本人形の口の辺りがぼっくりと抉られていた。
「…………あ、お姉ちゃんだ」
女の子は私を指差し、ニコニコわらいながらお姉ちゃんと言った。
「私?」
「そう、喜々津お姉ちゃんだよ。………はね、喜々津お姉ちゃんにお話を聞かせるの、」
女の子は自身の名前らしきことを言ったようだけれど、ノイズが走ったように聞こえない。でも、お話を聞かせるとはなんだろう。困惑する私に女の子は構わず続けた。カタカタと日本人形が揺れた。
「あるところにね、五人の男女さんがいたの、三人が男の子、二人が女の子、みーんな、みーんな仲良しこよしの五人なの」
小さな手を一杯に広げ、それでねと両手の人差し指を立てて、女の子は語る。
「男の子と女の子が恋人なったの、好き好きなのね」
お互いに交差させ。
「けれど、男の子の好きは女の子じゃなくて、女の子の舌だったの」
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