呪いの伝染。

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俺[大川、オオカワ]は、その日、どうしようもなく苛立っていた休日を台無しにされた。加え、これから先も当分、休みはないのだと言われた。いままで散々、こき使われて文句の一つと言わず全て押し込めて、俺にとっての夏休みが来る、はずだった。軋轢もストレスも一方的に溜まるだけ。 「ちっと通してくだしゃんせー、ごようのないもの、とおしゃせぬー」 女の子だ。乳臭いガキがそこにいた。白いワンピース。サンダル、麦藁帽子と手元に顔が半分、潰された日本人形を抱えて。おかしな歌を歌って、ニコニコ笑いながら、俺を指差し。 「大川お兄ちゃん、イライラしてるの?」 「あぁ?」 「怖い顔は嫌なの、でもね、でもね、大川お兄ちゃんにお話を聞かせるの」 「意味わかんねーこと、言ってんじゃねーぞ、クソガキ」 苛立ち混じりに怒声を飛ばしても、クソガキは動じることなく語った。 「あるところにね、仲良しこよしの五人がいたの、とーっても、とーっても仲良しこよしの五人がいたの、その中の二人の男の子と女の子が恋人になったのね」 両手の人差し指を、交差させてニコニコと笑い。日本人形がカタンと落ちて、俺はその場に立ち尽くす、五年前の夏休みのようなことを…… 「でもね、二人の恋人になったことを妬んだ男の子がいたのね。でも、当然、それに嫉妬したし、嫌な気分なっても自分じゃ勝てない、勝てる要素がないからイライラながら我慢してたの」 クソガキはムムーーと両手で頭を抑え、口を人差し指のばってんで塞ぐ。 「でも、ある時、女の子から電話があったの、『男の子が死んじゃった』『どうしよう』、でね、でね、男の子はチャンスだと思った。ここで協力して弱みを握ってやろう、恋人になれと迫ろう、男の子の死体の頭をスコップでグチャグチャに潰したね」 頭の半分、潰された日本人形を地面に叩きつけ。 「その男の子が、大川お兄ちゃんなの」 何も言えなかった。結局、あの女、喜々津は恋人になってもそりが合わなくて別れた。お互いに秘密を共有する形で。 「喜々津お姉ちゃんがね、お話があるんだって、ほら、後ろに」
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