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瞼が重い。
自分は死んでいるのか、生きているのか──。
ふと、身体を覆っていた水圧から解放されたような軽さと温かさを感じ、玲央は瞳を開いた。
そしてまず、驚いた。
波打ち際。砂浜。
向こう数百メートル程の場所に、西洋でいうところの城が建っていた。
更に、自分の出で立ち。
上半身裸の水着であったはずが、これまた西洋風のファッション。
ぼさぼさの頭にえんじ色のベレー帽、白の丸襟シャツに黄色の袖無しジャケット、下は無惨にも提灯のように膨らんだ半丈ズボン。
あまりに不似合いさに吐き気を催した程だ。
「ちょっと、ちょっとー!
起きて!起きなさいよ、終っ!!」
「さ、紗菜!?」
もっと波に近い場所に、あの二人の姿があった。
ここでの紗菜はビキニではなく、ドレス姿だった。
淡いイエローと真紅の薔薇のコサージュが映える、シルク製のシフォンドレス。所々に散りばめられたパール、エメラルドなどの貴金属がドレスの華やかさを引き立てる。
赤い紅を引いた唇が艶を帯びている。
「玲央っ!よかった、無事だったのね!」
「ああ、そ、それより終は!?」
「たぶん、気を失ってるだけだと思う。
……びっくりしたわよ、目を覚ましたらこんなドレス姿だわ、波打ち際に終が倒れているわで」
気を失っているだけ?
玲央は終の胸に手を置いてみる。
確かに終の鼓動は規則的なリズムを刻んでいる。
このぶんなら、すぐに目覚めてもおかしくはないだろう。
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