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安心してみたところで、終の姿を見た玲央は自分とのギャップに涙が出そうになった。
ロングの髪は後頭部で上品な赤のリボンで括られている。
よく童話の挿絵に登場するバルーン状の袖の白シャツに赤いビロードのマント、玲央と同じにも拘らず気品のあるデザインのバルーンパンツに、白地のタイツ。
造形の違いが、全ての分かれ目というはっきりとした例だった。
「う、う……ん」
眉間に皺が寄り、低く唸った後、終の瞼がゆっくりと開かれた。
「終! 終っ!
よかった、目が覚めたのね!!」
紗菜が終の手を握る。
「………紗菜? あれっ、ここは──?」
目が覚めた終はゆっくりと上体を起こし、周囲を見回した。
「……玲央も──っていうか、お前なんつー格好してるんだよ!」
「う、うっせ! 俺にもよくわかんねーんだよ!気が付いたらこうなってやがったんだ!!」
ぎゃあぎゃあとくだらない言い争いを繰り広げていると、不意に何者かがこちらに走ってきた。
玲央に似た格好をしているその男は、紗菜と終の姿を見るや否や背筋を伸ばし敬礼した。
「王子、ご無事だったのですね!
城の者共皆が心配しておりました。
船が難破されたとの報告を受けた時の王様の焦りようときましたら!
ともかくよかった!
おお、あなた様は確か隣国の姫君であらせられましたな。
王様が待っておいでです。
──ささっ、こちらへ!」
一気に捲し立てた男は、そう言いながら終の肩をがっちりと支え立ち上がらせた。
「えっ、私、姫様!?」
「悪い、玲央。
どういったわけかはよく分からねーが、とりあえず探ってみっからよ」
満更でもない二人は、従者とおぼしき者とともに城がある方へと歩き出した。
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