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「お、おい、ちょっと待てよ………ん?」
二人を追いかけようとして、玲央はふと足を止めた。
何かの視線を感じたのだ。
「誰か………いるのか?」
耳に入ってくる音は、寄せては返すさざ波の囁きだけで、他は何も聴こえない。
隠れられるものといえば、波打ち際に点在する岩礁ぐらいだ。
「…………まさかこんなところに隠れているわけがねーよな」
いたとしたら、紗菜が気付いているはずだしな──そう結論付け、玲央は踵を返し、二人の後を追った。
ぱしゃん、そんな小さな音が岩礁の裏手から聞こえた。
魚にしては大型の尾びれが、海に向かって大きく翻った。
玲央がそれに気付くことはなかった。
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