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玲央が城に向かっている途中、
──それは突然起こった。
玲央の視界がぐにゃりと曲がった。
視界に入っていた様々な色がマーブル模様を描くように掻き回され、混色を繰り返し、渦を巻き、足場が崩れていく。
「う、うわっ、──何────!!?」
暗闇の状態から電灯が点るような、ほんの一瞬のことだった。
玲央は、今しがた踵を返した場所に佇んでいた。
何が起きたかさえ全く把握できず、周囲を見回して──息を呑んだ。
「み、美海!!」
波打ち際に、うつ伏せの状態の美海が倒れていたのだ。
なぜか服を着ていなかった。
とりあえず美海の身体を起こそうと玲央が近付いた、その時。
「み、美海っ!! 大丈夫か、しっかりしろっ!! 美海っ!!」
玲央よりも早く、終が美海に近付き、身体を仰向けにさせて抱き上げた。
玲央は絶句した。
美海の喉元がまるで何かに食いちぎられたかのようにぱっくりと割れ、そこから血がこぽり、と噴き出したのだ。
顔面に血の気はなく、瞳は虚ろで、愛らしい小さな唇は蒼白く変色していた。
「…………………………………」
金魚のように口をパクパクさせ、その度にこぽりこぽりと赤の絵具が流れていく。
「う、うわぁあああああああああっ!!」
恐怖で思わず大声で叫び、後ずさった。足がもつれて、そのまま後ろに尻餅をついてしまった。
だが、奇妙はその後だった。
終は、美海の怪我に気付いていなかった。
──いや、見えていなかった。
それどころか、終の服は全く汚れていなかった。
まるで美海の血が、終を透過したように──。
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