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「こら、オヤジか君はっ!」
そこには、全身から雫をしたたらせた紗菜の姿があった。
よく見ると、玲央が感じた刺激の犯人は、紗菜の手に添えられた缶コーラだった。
「もうバテたの?……情けない!
寝てばかりいたらね、青春なんてあっという間に過ぎていくんだぞ」
言うことだけ言って満足したらしい。
紗菜は玲央から離れ、踵を返した。
そしてなぜか二、三メートル進んだ先で思い出したように立ち止まった。
「おっと、しまった、忘れ物だ」
コーラ缶は紗菜の手から離れ、綺麗な軌道を描いて玲央の手にしっかりと収まった。
「サンキュー!
でも俺はもう少しここにって、うぉわぁぁああああ!!!」
開けた瞬間、爆発する仕組み。
これぞ『お約束の展開』に、紗菜が笑い出す。
「あはははははははっ!」
眩しい太陽よりも眩しい、紗菜の満面の笑顔に、ついつい玲央の頬も緩み、
「ははははははははっ!」
一緒になって笑い出した。
笑い声は、真夏の海にいつまでも響いていた。
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