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「兄ちゃん、にいちゃーん」
「何だよう、兄ちゃんは今眠いんだよー……」
「ひま」
「そーかぁ」
休日の朝九時ごろ、妹の早苗が部屋に上がりこんで体を揺すってきた。
まだまだ遊びたい盛りの中学一年生だからなのか、早苗はやたらと朝起きるのが早い。
自堕落な生活を送っている大学生の身としては惰眠をむさぼっていたいものである。
「おーい、兄ちゃん?」
「ーーーー」
「……ぬうえぇいぃっ!」
布団を思いっきりぶんどられた。無言が気にくわなかったらしい。
「早苗、お前が暴虐の王か」
「何言ってんの」
ジトッとした目で見られる。その視線がスッと頭の方に移動した。
「今日の兄ちゃんいつにもまして髪の毛ヤバいね」
「え、生え際? もしかして俺死んだほうが良い?」
「よくわかんないけど水でもつけて直せば良いと思う」
「マジかよ、水ってやっぱり神だわ」
「んー?」
早苗がよくわからないとばかりに小首を傾げる。
とりあえず早苗の頭をワシワシと撫でた後、洗面所で顔を洗った。
可愛い妹のためである。このくらいのわがままは聞いてやろうじゃないか。
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