あなたの背中

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AnotherSide あいつと、一緒に上京するのが夢だった。 が、それは叶わなかった。 あいつは、結局地元の大学に進学した。 この春、2年生になる。 俺は一年浪人して、 この春、上京が決まった。 *** 俺たちは、今はもう彼カノではない。 俺たちが現役の受験生になるときに、俺から別れを切り出した。 俺は絶対に東京に行きたいと宣言してから、 擦れ違いが多くなった。 彼女は彼女なりに明るく振舞ってくれてはいたが、 離れきった心の距離はどうしようもなかった。 俺も、理由もなくあいつに冷たくあたってしまうことが増えた。 そんなとき、ある雑誌で 一度別れて再びよりを戻したカップルの絆は強い、という記事を読んだ。 …よりを戻す、自信はあった。 俺は何も考えずに、軽い気持ちで凜に別れ話を切り出した。 あのときの、驚きに見開かれたあいつの目は今でも忘れられない。 「大好きだったよ」 あいつは、泣きながらそう言った。 あなたみたいに優しい人は、いないもの。 そう言い残し、俺に背中を向けて走り去っていった。 …よりは、戻せなかった。 別れたあと、俺は一度だけあいつによりを戻したいと言ったのだが、 あいつは頷かなかった。 あなたの邪魔はしたくないのよ。 分かるでしょう? 冷めた目で、そう言った。 俺はそのとき初めて、何か大きな失敗をしてしまったことを悟った。
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