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1年間、温め続けてきた言葉がある。
「あのさ、俺が大学卒業して立派な大人になって、おまえを迎えに来たら、おまえはもう一度、俺を一人の男として見てくれるか」
忘れられなかった。
もう一度、もう一度だけチャンスが欲しい。
今度は、今度こそおまえを大切にしてやる。
半歩先を歩くあいつの背中。
今を逃したら、もう俺の手は二度と届かない気がする。
俺は、いつになく必死だった。
そしてしばらく、
二人の間に奇妙な沈黙が流れる。
また駄目かもしれない、
そんな思いが胸をかすめた、そのとき。
「ありがと…じゃあ、待ってるね」
あいつは、また。泣いていた。
END
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