第一話【親友と同じ女を好きになった話】

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 もうかれこれ二十年近く前になるだろうか。  当時20代半ばだった私は一丁前に会社員なんて洒落たモノをやっていた。  池袋の雑居ビルの二階に居を構え、三十人ほどの社員を抱える小さなソフト会社である。  時代はバブル絶頂期。  この頃こうした小さなソフトハウスがそこら中に乱立していて、どの会社も常時人を募集していたと言っても良いくらい仕事が有った。  出来ることが何もなかったらSEになればいい。  そんな風潮すら有ったのだ。  工場のラインの単調さに嫌気が差して辞めた私は、そんなわけでコナカの安物スーツに身を包み、一応ホワイトカラーと言える仕事を始めたわけである。
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