手記

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 扉を開けば青白い肌の男が玉座に肘をついていた。 頬はこけ、肋骨は浮き出ており、恰幅の良い従来の王とは異なる容姿で。  私は恐る恐る足を前に運び、男の許へ近づいた。  俯いていた男の顔は歩調に合わせ、次第に正面を向いていく。 健康体であればどれほどの美青年だろうか。  もし全盛期の彼を褒め称えるならば、この世に存在するどんな美辞麗句をもってしても表せない。  吸い込まれそうな深い蒼の双眼は、どこか奥に憂いを潜んでおり、私は彼の視線から目を離す事が出来なかった。  30平方メートルの部屋は男の醸し出す威厳に満ち溢れ、私の頬を冷や汗が静かに伝う。  それすらも不敬罪にあたりそうな、神聖で汚れのない空間。 『誰……だ?』  干上がった大地の如く乾いた声からは、一滴の水分も感じられない。 私は生唾を飲み込みながら、問い掛けに対し言葉を選ぶ。  静寂が辺りを支配し、男の放った声が室内を駆け廻り去った後、私は漸く言葉を選び終えた。
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