手記

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「まさか……アダム?」  私が問い掛けると、男は片眉を跳ね上げ不快感をあらわにした。 それは質問に対してというよりも、私が彼の質問に答えなかった事にだろう。 『誰……だと……聞いている』  言葉に怒気が混じり始め、これ以上の質問は彼の神経を逆なでするだけだと判断した。 「”クライス・フィオラ”。冒険者だ」  素直に自身の名を告げると、男は漸く名乗った。 『クライス・フィオラ。私の名はアダム……察しの通りだ』 「やはり!」  まさか悠久の時を経て生きているなんて。 歓喜に身震いした私は浮かび上がる様々な問い掛けをぶつけようとした。  しかし…… 『……殺してくれ』  アダムは一切の質問を許さず、乞う様に私へ願い出る。 戸惑いを隠せない私に呆れたのか、彼は右手を軽く持ち上げると内から外へ数度払った。  去れ……という事だろうか。
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