7人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの、失礼ながらお子さんは?」
「いるけど、それが何よ!?」
「貴女も子供を持つ親なら、妊娠中がどんなに大変かおわかりですよね?それを妊娠は病気じゃないとか……この方にどれだけ失礼なこと言ってるかわかりますか?謝ってください!!そして座りたければ御自分で席を譲っていただけるように頼んでは?私はこの女性に座ってもらうために席を立ったのであって、貴女に譲るために席を立ったわけではありません!!」
一気に捲し立て、ハッと気付いたときには周りから
「そうだよねー!!」
「あの人の言う通りだわ」
「常識がないのはどっちだよ」
などと言う声が聞こえてきた。
「確かに私も鞄を置いたし、言い過ぎたことは謝ります。すみません。ですが、この車内で妊婦さんが立ったままだと危険なので、此方の女性に席を譲ってあげてください」
そう言うと女性は顔を真っ赤にして
「なっ、何よ!!わかったわよ!!私が立てばいいんでしょっ!?」
怒って席を立ち、人にぶつかりながら隣の車輌に去っていった。
「すみません、私が余計なことしたばっかりに嫌な思いをさせてしまって……」
妊婦さんを座らせ、私は二人に謝った。
「いえ……本当なら僕が妻を庇わなければいけないのに、此方こそすみませんでした」
「私こそ席を譲っていただいて……ありがとうございました」
妊婦さんと旦那さんは申し訳ないと私に頭を下げる。
お互いに謝り合戦のような感じになってしまい、三人で顔を見合わせてクスクスと小さく笑ってしまった。
車内アナウンスが下車予定の駅に着いたことを報せる。
「では、私はここで降りるので……」
「本当にありがとうございます」
私が降りようとすると、二人は再度、私に頭を下げた。
最初のコメントを投稿しよう!