偶然の出逢い~依都side~

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暫しの間、エレベーターの前で自己嫌悪に陥っていたが、グジグジしていても仕方ないので、気持ちを切り替えて会場である第一会議室に向かった。 会議室の前にはもう既に来ていた人もいて、何人かが椅子に腰掛けて待っていた。 私も受付を済ませ、椅子に腰掛ける。 皆も緊張しているのか、顔が強張っている。 きっと私も同じ様な顔つきなんだろうと思うと、何だかにやけてしまいそうになるが、何とか堪えた。 筆記試験を終え、第二次試験だったので、少人数が面接を受けることになる。 私の後に何人か来て、総勢で十人にも満たないほどだった。 集団面接ではなく、個人面接だったので余計に緊張が増す。 そろそろピークを迎えようとしていたところで私の順が来た。 ノックをすると 「お入りください」 と声が聞こえた。 指導された通りに入室すると、若い男性と威厳がありそうなおじさんがズラリ。 おじさんなんて口が裂けてもこの場では言えないんだけど……。 形式通りの挨拶をして、椅子に座る。 今まで受けていた面接と同じ様な質問がされ、何度となく答えた同じ言葉を私も口にする。 そろそろ面接も終わりかと言うときに、若い面接官が 「最後に一つだけ、いいですか?」 「はい、何でしょうか……?」 何だろうと身構える私に 「貴女の本音でお願いします。今日たまたま乗り合わせた電車で貴女を見掛けました。何故、あの中年の女性を非難したのですか?」 「それは……」 他の面接官が男性の言葉にざわついた。 「……あぁ、そうでした。貴女が妊婦の女性に席を譲ろうとしたら中年の女性に横取りされたからでしたね」 「……はい」 知っているならどうしてこんな言い方をするのだろう。 「とても、勇気ある行動だと思います。私は素晴らしいと感動したものです。ですが……例えばあの中年の女性が、我社の重要なクライアントで、貴女が我社の社員だとしたら?貴女は、はたして同じ行動をとるのでしょうか?」 ……確かに契約を打ち切られては多大な損害を被る。 もしかしたら、私一人のクビじゃ済まないかもしれない。 私は今日と同じ行動ができるだろうか? 「……私の行動が軽率だった事は否めません。会社の損害についても考えました。私の解雇では足りないかもしれません」
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