気紛れ

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男の子は震えていた。 それはもうガタガタと。 怖くて震えていたのか、はたまた 怒りと恥ずかしさか。 保健室は、幸いに保険医が居なかった。というより、ほけんいは何処に行ってるんだ。 とりあえず、ベッドに座らせて様子を見る。 小刻みに震える手を握ろうとは思わない。それは、余計な恐怖を与えるだけだろうから。 「消毒する?気持ち悪くない?」 「大丈夫…大丈夫だから」 案外、普通の子だ。 というのが、感想だった。 鈴の鳴るような。 それでいて、しっかりした声が。 俺の興味を惹いた。 「名前は?」 「……。椎名琥珀 です。」 「うん。ちょと待ってね。」 琥珀、洒落た名前付ける。 プルルルルrr 『三笠さん。』 『どしたの?』 『一階の物置で強姦未遂がありました。至急、車を送ってください。それと風紀へ』 『何だって、そんなこと…』 『・・・・。今、椎名琥珀という一年生を保護しています』 『分かった、まずは、椎名くんを車を向かわせたから寮に帰そう』 『はい、ありがとうございます』 琥珀は縮こまっていた。 少しずつ話していくうちに琥珀は普通の子だと分かっていった。 「琥珀、もうすぐ車が来るから」 車に乗ってからも、琥珀は何回も、首が取れそうな程お礼をして帰っていった。 花が咲いたような笑顔だった
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