なにもない。

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「もー、ほんと可愛いなぁ」 すりすりと、 頭を擦り付けてくる空先輩。 「やめろってんだ」 「先輩なんだから、敬語ね?」 あう。 案外規律的な人だった。 でも、やめてほしい。 「っぁあ」 首筋は弱いのだ。 …情けない声。 後ろの気配が揺れた、気がした。 笑ってるみたいだ。 「弱いんだ、首」 「先輩、やめてください」 所詮、チャラ男。 されど、先輩 だ。 「空って、呼びな。」 声、 命令癖、 「日向そっくり…」 自然に声が出た。 「そっくり、ねぇ。まぁ、憂季の方が似てるんだけど…」 気配が揺れる。 ゆら、ゆら、と。 揺れる。 分からない人だ。ーーーーーーー そう、呑気に思っていた。 「あ、でもね、憂季。 オレは日向に似てるって言われるのが大嫌いなんだ。」 ダイレクトに伝わる感情。 懐かしい。 それは、 ーー哀しさだった。 言われ馴れた。 そんなことに対する、哀しさだ。 「… 」
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