なにもない。

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ばしっ やけに渇いた音が部屋に響く。 「触んな!!」 このピアスは日向の物だ。 「ごめんごめんw」 何故か嬉しそうに笑う先輩。 でも、‘’これ‘’だけは触らせない。 触らせたくなかった。 「なんか妬けちゃうなぁ。」 空先輩は時折、無表情になる。 何か、解りきったような。 哀しい顔をーー。 大分遅れて、平手打ちしてしまったんだと気づいた。 「ぁ…すいません。」 エロかろうがチャラかろうが、 先輩は先輩だ。 空先輩は目を丸くして笑った。 にっこりと、 「いえいえ~、でも、ピアスなんてしてると思ってなかったなぁ」 にやり、と見透かされていた。 「それって、日向のでしょ?」 沈黙が流れる。 図星だった。 何処かの本で読んだが、 嘘をつくときの鉄則は自然に 受け答えすること、だそうだ。 だとしたら、もう ーー嘘はつけない。 「……はい。」 空先輩の瞳の紫が揺れる。 「へー、綺麗だね。」 空先輩はにっこり微笑んで言った。この人はいつでも、笑う。
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