気紛れ

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タンタンタン… この世には悪魔、と呼ばれる人間がいることがある。 それが、この人だ。 「おい、有篠」 容姿端麗、成績優秀、規律正しい それが、この風紀副委員長だ。 では、何故その風紀が俺に話しかけてきたのか? 「どうしましたか?三条先輩」 失礼のないように聞くと、質問が質問で帰ってきた。 「何がだ?有篠」 「何故、風紀がここに?」 「さあな、しかし風紀は乱してもらっては困る」 「乱してなんていませんよ?俺は‘’ゆうとーせー‘’ですから」 「ほほう、では何故、‘’ゆーとーせー‘’とやらが空き教室に入って遊んでいたのか、教えてくれ」 あれ?と首を傾げる。 あのときは顔は見られていない筈 「なんのことですかね?」 「仕事を増やすな、と言っている。お前の匂いは覚えてるからな…分かっていないとでも思ったか?」 駄目だ。 完全にバレている。 匂いって怖っ この人怖っ 「俺は楽しいことは好きだ、お前もそうだったろう?」 「はい」 まさか… 「そして、めんどくさいことは嫌いだ、そうだろ?」 「は…い。」 もしやこれは… 「俺はお前の違反行為を見逃そう、その代わり…」 「取り引き、ということですか…」 一瞬だけ戸惑いながら俺は聞く。 「ああ、簡単だろう?」 「で、先輩。俺は見逃してもらえるかわりに何をするんですか?」 「する…という言い方は可笑しいな。まぁ、一年の一学期に戻れ」 「え?」 先輩は溜め息をついて言う。 「お前の素行が悪いと噂になってるんだ。しかし、1年の時は優等生の優等生だったろう?」 バンッ いきなり先輩が壁を蹴った。 ドメスティック風紀委員。 「俺はめんどいことが嫌いだ。それはお前もだろう?わかったら了承しろ。選択肢など無いからな」 「分かりました。出来るだけ1年の時のようにします」 そう言えば、先輩は微笑んだ。 「交渉成立だ、それと有篠」 「なんでしょうか?」 「風紀委員が人手不足だ。暇だったら手伝いにきてくれ。それか、現役に復帰しても構わない。 …じゃあ、またな」 先輩はそれだけ言うと、くるり、と背を向けて帰って行った。
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