気紛れ

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「先生。体長が悪いので、保健室に行かせて下さい。」 俺にしては丁寧に頼んだ、筈だ。 保健室に行けば考え事が出来る。 「後で覚えとけ貸し1だぞ。」 おっと脅迫だ。 もう、ホストじゃない。 その筋の人だよ。 巧が睨んできたがスルーして、 俺は教室のドアを閉めた。 「保健室…遠い。」 やっと辿り着いた時には、 息切れが半端ない。 実は運動に関しては俺は非力だ。 運動会では毎回の如く最下位を記録してきた。 ガラッ 「失礼します。」 うっすらと煙が巻く室内は柑橘類の香りがした。 「どうしたの?憂くん。」 「親しくもないのにあだ名付けないでください。」 保健室の悪魔。とまで言われる。 この人は、輪廻 古式。 一瞬だけ見れば、 赤い眼鏡の根暗にしか見えない。 しかし、隠されているのは 新雪のような白さを誇る肌、 くるん、とした睫毛。 男にしては艶やかな髪。 そんな美貌を見せつけるかのように輪廻 古式は脚を組んでいた。 「怪我?持病?」 乱雑な聞き方だが、落ち着く声の低さに一瞬、戸惑う。 そんな保険医に俺はこう言った。 「頭痛、吐き気、嫌気。」 「一番最後は認めないよ?」 「すいません。」 「まあ、座って。」 促されるままにベットに座れば、 保険医はニコッと微笑んだ。 まぁ、どうでもいい。 それより、問題はどうすれば 親衛隊を守り、会長を納得させ、 三笠さんの願いを叶えるのか、 だ。 「はぁ、めんど。」
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