残像賛美

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有篠side 結局、寝られるはずなかった。 さっきから、あっちに行ったり こっちに行ったり世話しなく動いていても、寝られない。 「夜人からも連絡ないし…やることないなぁ。」 寮のベランダから見える景色は、 光り輝くビルと、住宅地だった。 夜風がさわゎ、と髪を撫でた。 きっと、今の俺は ……酷く汚いんだろう。 色んな情報を集めて、がんじがらめになって、それでも… 何しろ、隈が酷い。 prrrprr 呼び出し音に飛び付くようにスマホを開く。 『憂季ー、分かったよ~』 何でこいつはいつも能天気なんだ、と思いながらそれに救われているのだ。 すると、夜人はぺらぺら、と 喋りだす。 『え…とね、爽やか君はねーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー』 出てきたのは体重から友人関係、それから子供の頃のこと。 個人情報と名のつくもの全てだ。 『あ、不良くんのはメールでね?不良くんチームとか入ってるから長いし♪じゃ、報酬はまた二倍ね?ばいび~』 ツーッツーッと規則的な音で、また一方的にきられたのだ、と気づく。 「それにしても、凄いなぁ。 爽やか君。あれだけ爽やかなのにやってることは結構やんちゃ」 ほんとにびっくりだ。 左耳に少しだけ触れて微笑む。 「うん。楽しくなってきた」 そのまま、俺はナイトウォークを楽しむことにした。 有篠 憂季とは 楽しい事が大好きで、 極度の甘党で、 めんどくさいことは嫌いで、 自虐的で どうしょうもない人間だってことを皆、知らない。
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