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魔法というものが普及して恐らくは2000年経ったのだろうが、この物語の主人公である綾部右二はそんなもの使えた試しがなかった
右二は手を開いて、詠唱を始めた
「Fire is the incarnation of blood. 」
火花すら起きない
「Water is the incarnation of meat. 」
汗なら出てきた
「Thunder is bony incarnation.」
静電気すら起きない
つまりは魔法を扱えない『異端』が綾部雄二なのであるが、雄二は本当の意味で『異端』であった
右二の目元は包帯でぐるぐる巻きにされ、前が見えないようにされていた
〈第二乙型禁忌魔術魔眼種〉と呼ばれる魔術を生まれながらにして持ち得た彼には才能はおろか視界すら当たらなかったのである
(なんで俺が…)
と右二は思うことが多々あるのだが、恨み言を言っても始まらない
右二は試しに包帯を外し、掌を見ても自分の手から、炎や水そして雷など出てくる結果が見えなかった
だけれど、はっきりと視えた
(15分後に座っている俺の頭に花瓶が落ちてくる…)
自分の頭に花瓶が落ちて、頭蓋骨が砕かれ、脳漿を撒き散らして死ぬ結果が見えたため、包帯を巻き直し、さっさとその場を後にした
「俺の結果はお先真っ暗ってね♪」
諦めが混じった呟きを漏らしてから、軽快な足取りでその場を後にした
そしてその15分後にたまたま通り掛かった女子生徒の頭に花瓶が落ちて、脳漿を撒き散らしながらその女子生徒が死んでいったということは右二には解りきった結果だった
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