第壱節・時の姫巫女

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あまりにも深く、平衡感覚を失いそうになる程の暗闇───── この夢はいつもそこから始まる。 その中に光る6つの目。 それは明らかにこの世のモノではなく、闇の中でさえ蠢くのがわかるその巨体は薄い繭のようなものに包まれていた。 『おのれぇ・・・この封印をかけられ幾千幾万もの時が流れたにも関わらず、未だに我を閉じ込め続けるか。時の姫巫女よ!貴様の何代先の子孫になろうとも!この屈辱を晴らす為!かならずやこの我が根絶やしにしてくれるっ!』 音ではなく脳に直接語りかける・・・いや、脳に叩きつけるようなおぞましい声。 その言葉が向けられているのは、俺じゃない。 それでも萎縮してしまいそうな声をかけられている【姫巫女】と呼ばれた少女。 その少女は眉一つ動かすことなく、化物の目の前に佇んでいた。 「この封印は対象の時を止める。多くの犠牲を払い続けた戦いの果てに、弱った貴方を超える力をもって封印した時点で、力の天秤が貴方に傾くことはありません。【時を喰らう者・フィード】よ。貴方は未来永劫、私と共にこの異空間で生き続けるのです────」 怯むことなく化物に告げる凛とした声が闇の中に響き渡る。 いつもなら、ここで夢は終わるはずだった。 しかし──── 『そうとは限らぬのではないか姫巫女よ?この封印・・・我を捕らえる為に些か大きくし過ぎたのではないかな?』 「なにを────」 『クックックッ・・・隠さずともよい、既にわかっておることよ。我は通れずとも、我の一部である禍太刀であれば通れるのだからな。既に幾度も放っておるが、貴様はそれを全て見過ごしておるではないか。』 「っ!?」 姫巫女が言葉に詰まる姿を見て、化物が勝ち誇るかのように目を細める。 「・・・構いません。貴方に比べれば、禍太刀などはとるに足らない存在。なにより、その禍太刀と戦い封じる者達がいます。その者達がいる限り、貴方に封印を破る事は出来ません。」 『クックックッ・・・それはどうかな────』 その言葉と共に、膨れ上がる化物の力。 「そんな!何故!?」 『時の姫巫女ともあろう者が気付いていなかったとはな!』
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