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封印を破らんばかりに膨れ上がった化物の力。
それをなんとか抑え込んだ少女が、呼吸を乱し肩で息をする。
その姿が如何に危険な状態であるかを物語っていた。
「くっ・・・どうして────」
『世界に放った禍太刀は、どれほど時間と空間を跨ごうとも我と繋がっておるのだ!よもや、我の力を忘れた訳ではあるまいな!』
「まさか!」
『そうだ!禍太刀は我の一部!矮小ながらも、時を喰らい破壊する力も持っておる!喰らった時を繋げることなど造作もない!全ての禍太刀は封じられるまで、我に力を送り続けておるのだ!ただ貴様に封印されていたわけではない!封印によって力が消費されない我は、これまで力を蓄え続けておったのよ!』
「そんな────」
『しかし、安心するがいい。今はまだ、貴様の力の方が上のようだ。だが、それも時間の問題よ。近い内に、我は貴様の力を超える。その時こそ、この忌々しい封印を食い破ってくれる────』
そう言うと、不気味なまでに大人しくなる化物。
それを見つめる少女の顔に、悔しさが滲み出ていた。
「(多くの家臣や民を犠牲にして、ようやく封印したと言うのに・・・私の考えが甘かったばかりに─────)」
『クックックッ・・・さぞ悔しかろうなぁ。いいぞ・・・その顔だ!その顔はこれまでの永き間見続けたどの顔よりも良い!封印を破るその時!貴様はどの様な良き顔をしてくれるのだろうなぁっ!』
「確かに、私の甘さが招いた結果です。ですから、弁解等は致しません。ですが!この命にかえても貴方の思い通りにはさせません!」
少女が叫ぶと共に、化物を覆っていた封印が何重にも掛けられていく。
『ほう、まだこれほどの力を残していたか。だが、如何に時に祝福され永き時を生きる姫巫女と言えども命を削る事になるぞ?』
「言ったはずです!【命にかえても】と!この封印は・・・貴方の言った通り命を削る。しかし、貴方の力を奪い世界へ還元するもの!私の残された命を賭けて、貴方の力を奪い去ります!」
『よかろう・・・どのみちすぐには出られん。我の復活は先延ばしになるが致し方ない。貴様との根競べに興じてやろうではないか!』
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