第壱節・時の姫巫女

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化物の言葉を最後に、全ての音を失い耳鳴りがするような沈黙が闇を支配する。 「(私に残された命は少ない・・・ですが私が力尽きても、直ぐに封印は解けることはない。大いなる祝福を受けし大地に生きる数百年・数千年後の子孫達よ。その時までに全ての禍太刀を封じ、フィードに対抗出来る者が生まれ育っていることを私は信じています。そのときはどうか────)」 切実な少女の想いを最後に、夢は終わりを告げる。 意識がハッキリしていくと共に、俺の耳に賑やかな声が聞こえてくる。 その賑やかな声とは別に、抱えていたバッグから小さな女の子が顔を覗かせ話し掛けてくる。 「随分長かったわね。」 「今回は最後まで見ていたみたいだ。どうやら、もう時間がないらしい。・・・それよりシャロ、あまり人の多い所で顔を出すな。俺は人形と話すイタい人に分類されたくない。」 「あたしは人形じゃなぁ~い!妖精だって何回言わせれば気が済むのよ!」 「わかったわかった。ほら、飴やるからおとなしくしてろ。」 「わ~い、飴だぁ────」 シャロにいつもの飴を渡し、バッグのファスナーを閉じる。 言っておくが、俺はヤバい薬をしているわけでもイタい人でもない。 彼女は実在する妖精で、幼い頃に亡くなった祖母から預けられた友人でもある。 祖母と彼女はこの世界・・・地球の住人ではない。 フロニャルド・・・なんだか力の抜ける名前だがその世界、所謂異世界の住人だ。 普通の人間なら、まず信じはしない。 でも、祖母には人間にはない耳と尻尾があった。 それは隔世遺伝して俺にも受け継がれていると祖母から聞かされて異世界の事も聞いていたが、その時の俺は信じていなかった。 しかし、【あの夢】を初めて見たまだ幼かった頃の夏の日。 シャロのイタズラに巻き込まれ、初めてフロニャルドへ渡った時に自分でもその存在を確認していた。 その時から、【あの夢】の内容は年が経つにつれて長く鮮明になっていった。 祖母から聞いたお伽話。 【時の姫巫女】にそっくりな夢。 そして、祖母が遺した日記に綴られた言葉を見た俺は、そのお伽話が事実であり祖母があの少女の血縁であることを知った。 さらに、【あの夢】は最も力を持つ一族の者だけが見ることになる一種の警告である事も書かれていた。
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