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そして、
吉田「…ぁ、今日も連れてきたのか?」
紫苑「えぇ。いつも一緒にお邪魔してすみません…」
吉田「いや…俺は別に…//」
そう、こいつと共にやってくるアイツ…
紫苑「さ、出ておいで」
「……」
紫苑に促されて、奴が持っていたキャリーから出てきたのは紫苑の家にいる兎、"ヨシダさん"だ。
こちらは何故か俺の飼い主と同じ名前。
だが性格は全く違う。
兎ヨシダ「こ、こんにちは…シオンッ」
狼シオン「おう…」
兎ヨシダ「…っ、…っ」
ただ返事を返しただけなのにアイツは顔を真っ赤にして、困ったように眉をハの字にしてるし体も小刻みに震えている。
恐らく自分が補食される立場だということを知っているからだろう。
何しろ初めて会った時は緊張で動けなくなっていたし…。
兎ヨシダ「な…なに?俺の顔に、何か…着いてるの?」
しまった。見つめすぎたらしい。
大きな夕焼け色の瞳には不安からか大粒の涙が浮かんで、長い耳はすっかり垂れ下がり、プルプルと震えが大きくなってきた。
兎ヨシダ「…っ、…な…なに?」
狼シオン「…」
俺が何も答えないでいるとアイツの震えは更に酷くなった。
そんなに食べられるのが怖いのか…
なら、
狼シオン「…あぁ、悪い。……つい旨そうだなって思った」
兎ヨシダ「―――!!!」
悪びれもなく言ったらアイツの顔は一瞬で青ざめ、涙が溜まった瞳からはボロボロと涙の洪水が起こった。
兎ヨシダ「ぅ…旨そう…って、お…俺……食べる、の…?」
すっかり腰が抜けたのか、その場にペタリと座り込んでしまった。
兎ヨシダ「ぁ、う…やだ…食べ、ないで…っ…食べられるの…嫌、だぁ…っ」
狼シオン「(おぉ…)」
とうとう泣き出してしまったアイツに、思わずドキドキしてしまう。
そう、俺はアイツをこうやって苛めるのが好きなんだ。
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