気になるアイツ

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兎ヨシダ「ふぇえええん…」 体を丸くして震えながら泣くアイツを無言のまましばらく見つめる。 狼シオン「(本当にまん丸になるんだな…)」 もちろん今の俺には食う気なんて全く無い。 第一、「食べちゃダメ」って言われてるし。 俺はちゃんと言われたことは守れる狼なんだ。 だけど、「苛めちゃダメ」とは言われてないから、このくらいいいよね? 狼シオン「…ねぇ、食べられるの本当にいや?」 兎ヨシダ「…っ!っ!」 アイツは縮こまったままうんうんと頷いた。 狼シオン「…じゃあさ、俺の言うこと一つ聞いて」 兎ヨシダ「っ、グスッ…な、に?」 狼シオン「……俺にキスしてよ」 兎ヨシダ「ぇ…?」 俺の言葉にアイツは涙が溜まった瞳をしたままきょとんとした顔をした。 こいつは俺のことキライな筈… キライな奴にこんなこと言われたらきっとまた… ―ぐい…っ― 狼シオン「…!!?」 ――ちゅ…―― いきなり引っ張られたかと思えばほっぺに柔らかい感触… 狼シオン「……っ!!?」 兎ヨシダ「こ、これで…いい?」 呆気に取られていた俺にアイツはまた顔を真っ赤にして、じっと俺を見つめてきた。 狼シオン「ぉ…お前今……」 兎ヨシダ「…キス、したら食べないでくれるんだよね?」 狼シオン「ぁ…」 そうだ… 俺が最初に言ったんだった… なのに… ――…ドキ…ドキ…―― なんでこんなにドキドキするんだろ…
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