第三話

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その日は朝から落ち着かなかった。 誕生祭が明後日と迫っていた為か、特に気にも留めていなかった。 エレナと産まれたばかりの息子の笑顔に見送られながら、少し早いが王宮へと足を向けた。 こういった毎日が幸せなのだと、初めての感情にらしからぬ笑顔がこぼれる。 「ムーア様」 王宮に着くと不意に声をかけられ、にやついた表情を慌てて戻す。 「ラル。どうかしたのか?」 ラルは、黒竜騎士団で最も腕が立ち、頭も切れ、かといって余計な事は口にしない。 ムーアが最も信頼を寄せる男の一人である。 「今朝、フランツ大司教が御亡くなりになりました」 「な、亡くなった!?どういう事だ!!」 突然の衝撃に思わず声が出た。 「心臓の病によるものと神殿内では囁かれておりますが……」 歯切れの悪い言い方が気になった。 「その真相を探りましたが、詳しい事は何も掴めませんでした。それに、気になった事が……」
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