2学期・前半

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気付いてしまった途端、瞬時にいろんな感情がない交ぜになって溢れ出る。 処理が追いつかなくなって、馬鹿みたいに固まった俺の視界は定まらずにぼやけた。 軽々しく口先だけで助けたいなんで言っておいて、守られていたのは自分の方だった。 最初のSOSを見て見ぬフリをしたあの瞬間に、俺は彼女の拠り所ではなくなっていた。 誤解を解かなければ、自分の罪を告白しなくては。 黙っているのは卑怯だ。 分かっている、だけど――朱莉にそれを知られるのが、怖い。 自分自身が壊れかけたギリギリの状況で、それでも他人に……俺に頼らずに、それどころか切り離そうとした朱莉の、強さと、そして優しさ。 俺自身の、不甲斐なさ。 教師のくせに――生徒なのに……いや、もう違う。 もう、なんの繋がりもないはずだ。 なんでこうなっている。 どこで間違った。 どうするべきなんだ……いや、どうしたいんだ、俺は。 まとまりなく溢れてくるごちゃまぜの感情に混乱した。 今、言うべきことは、一体何だ。 何の話をしていたんだっけ。 朱莉の家の事情――違う、最後は、母さんの質問。 そう、じゃない。 今一番、言わなきゃいけないのは――、 「……ごめん……ッ」 破綻した思考回路、脳からの命令を無視して口から漏れた声に、朱莉は「えっ」と小さく戸惑いの声を返した。 「もう逃げない。助ける。だから……頼れよ……!」 他の誰でもない、俺自身の声だった。 絞り出したような掠れた情けない声が耳に届いた時、漸く頭が追いついた。 朱莉のためでも、彼女の母親の為でもなく、ただ俺が、俺自身の欲求のままに。 知識も、経験も、なんの力も持ち合わせない、クソの役にも立たないだろう俺が。 彼女を助けたいと、頼って欲しいと願っている。 それが、それだけが、俺の本心だった。
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