2学期・前半

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一気に冷静になって状況を思い出すと、ただでさえとんでもなく恥ずかしいことを、それも母親のいる前で口走ってしまったことに気付く。 うわ俺、下手くそ! 不器用にもほどがある。 畜生、なんつう羞恥プレーだ。 「センセー」 ひとり勝手に恥辱に悶えていた俺を、その言葉が引き戻す。 ハッとして顔を上げると、朱莉は 「そのつもりで……、着いて、来たよ」 そう言って、――笑った。 眉間にくしゃくしゃに皺を寄せて、引き結んだ口は震えていた。 目だけがしっかりと開き俺を見据えている。 お世辞にも綺麗とは形容出来ない、ギリギリまで抑え込んでいた感情が爆発したようなその表情は、今まで見てきた作った笑いでも弾けるような満面の笑顔でもなかったけれど。 俺には、笑っているように見えた。 その大きな目から大粒の玉がひとつだけ、生まれ落ちて、赤いフレームに当たって、弾けて散っていく――瞬間。 「――ッ」 気付いた。 知ってしまった。 よりによって今、こんな時に、こんな状況で。 それは、さっき溢れ出たごちゃまぜの感情のおまけみたいに時間差でポロッと出てきたけれど。 多分、きっと、これが俺の混乱した感情の、迷いの、怯えの、全ての原因だった。 俺、は、瀬戸朱莉の、ことが。 「ふうん?」 突然入れられた母さんの合いの手に、びくっと身体が反応してしまった。 「なんだかよく分かんないけど、うちのヘタレはこれでも自分で言ったことはやる男だよ。安心しな」 母さんが嬉しくないような恥ずかしいことを言って、ぽんぽん、と2回、朱莉の頭に触れる。 朱莉は完全に力を抜いて、ふわりと表情を和らげた。
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