2学期・前半

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「センセー、お母様の前では子どもなのね」 「親の前ではいつまでたっても子どもは子どもさ」 目を合わせて楽しそうに笑いあう2人にこっちが脱力する。 子どもって! そりゃまだ俺は頼りないかもしれないけど、でも…… 「ほら見なよ、ふてくされて。ほんっとガキだねぇ」 ……この、クソババアーッ!! 俺を指差して笑う母さんに一矢報いてやろうと腰を浮かしかけたその時、不意に真顔に戻った母が言った。 「……しっかりやれよ隼人、男見せてみろ。やると言ったからには、あんたがあんたなりに出来る方法で、最後までやり通しなさい」 ――『俺に出来る方法で』。 全てを語ったわけではないのに、母さんは良く分かっている。 俺が逃げた理由も、逡巡した理由も。 「――……ってるよ」 『分かってるよ』。 素直になれずに身体ごと背けて、掠れた言葉に、それでも母さんは満足げに頷いた。 「さてと、じゃあ」 と、また話を始める体勢に戻る母さん。 「親の前で大人になりすぎちゃった朱莉ちゃんは、うちの子を見習って、素直なこどもに戻らなきゃね」 また俺を子ども扱い。 それはすごく嫌なはずなのに、俺が『朱莉らしく』と願ったのはつまり母さんが言ったことと同じなのだと気付くと、ぐうの音も出なかった。 「戻れる……でしょうか」 不安を顔いっぱいに浮かべながら尋ねた朱莉に、母さんは笑う。 「戻れるさ。子どもがいつまでたっても子どもなのと同じように、親だって何があっても親なんだよ」
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