2学期・前半

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「ま、無理して家庭教師に戻ることもないか。辞めてからも連絡取れてるみたいだし」 木嶋はありがたいことに、深い突っ込みもなく引いてくれた。 「そういや、お前は?アイツと連絡取ってんの?」 ふと気になったことを聞いてみる。 すると彼女は、パウダーまみれの芋をひと掴みペーパーに載せて俺の前へ寄越した。 「……何コレ」 「気持ちばかりのお礼です」 えへへ、とはにかんだように笑う木嶋に、俺は少しだけ、隣にいた裕也は『どん』が付くくらい引いて顔を見合わせた。 「進藤くんが言ってくれたんでしょ、私が心配してたって。朱莉ちゃんの方から連絡くれたんだよぉ」 元気そうだった、と安心したようにニコニコしながら、ついでと言わんばかり、裕也の方へも数本ポテトを配る。 早速それを摘まみながら、 「じゃあよ、またたまにはサークルに朱莉ちゃん連れて来いよ!」 とノンキに提案をしてくる裕也に、俺も木嶋も苦笑した。 「あのね白石くん、今までの話ちゃんと聞いてた?朱莉ちゃん、今からが大変になるの」 ポテトの先端で裕也を指しながら、木嶋が肩を竦める。 「まあ……でも、あいつも来たがるだろうし。全部片付いて落ち着いてから、かな」 それがいつになるかは、誰にも分からないのだけれど。 気が遠くなるほど先かもしれないその未来を思って、ぼんやりと空間に視線を彷徨わせる。 「暗く考えるなよ!気分転換は必要だぜ!」 醤油バターの粉にまみれたままの手でバシバシと遠慮なく背中を叩かれ、つい顔をしかめた。 汚れたかも知れない、少し痛みを帯びた背中を気にしながら、思う。 コイツの能天気さに、俺はよくよく救われている。
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