2学期・前半

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母さんは、半月足らずでもうすっかり瀬戸朱莉の母親の茶飲み友達になっていた。 深く突っ込んだ例の件には、まだ触れていない。 あれから我が家では『作戦会議』が開かれ、ついに親父までが巻き込まれた。 作戦はごくシンプルで、会議を仕切った母さんの大雑把さがよく表れている。 母親には母親を。 父親には父親を。 子どもには子どもを。 ――担当が、振り分けられた。 ただ、それだけだ。 見知らぬ一家の、それもまだ誰も(俺も母さんも)会ったことのない『父親』担当にされた親父からは、文句のひとつも出なかった。 それは決して母さんの尻に敷かれて縮こまっているからじゃなくて、一家の柱であるべき『父親』として、聞かされた瀬戸家の状況になにか物思うところがあったからに違いない。 豪快すぎる母さんの陰に隠れていつもかすれがちな親父だけど、この時の意思のこもった目に、俺は久しぶりに力強さを感じた。 母さんは作戦の第一歩として、父親同士をごく自然に引き合わせるため、二家族での行楽を提案する。 『もう秋ですね、たまには出かけない?味覚狩りとか、紅葉狩りとか――家族みんなで』 これに朱莉の母親がどんな反応を示すかは、実行に移してみなければ想像もつかない。 俺と朱莉が同行するかどうかも現段階では未定だ(瀬戸家の立場を客観的に考えると元家庭教師と家族ぐるみで行楽に出かけるというのはものすごく不自然なことに思え、個人的には同行しない方を望む)。
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