2学期・前半

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朱莉の母親ないし父親がこの提案を渋った時の陰の協力者は勿論朱莉だ。 俺は彼女と密に連絡を取り合い、なんとか互いの父親同士がごく自然に出会う場を作るために動く。 引き合わせた後は親父の仕事だ。 朱莉の父親の本心を聞き出し、我々家族は状況を知っていて協力の意思があることを伝え、きちんと治療を受けさせることを勧める。 この間、母さんは朱莉の母親を下手に刺激しないように、他へ引き付けておく。 俺が何も知らずに地雷を踏んでしまったあの時のように、素人が安易に手を出せば病状を悪化させかねない。 その後――俺や朱莉がその場に同行しているかどうかはまだ分からないが――瀬戸家がどう揺れ動くのかは、うちの誰もが不安に思っているところだった。 それ故、初めから担当が振り分けられている。 母親のフォローを母さんが。 父親への説得や協力を親父が。 そして何かあった時には、俺が朱莉を支える。 母さんの作戦は、決して自分たちの力に頼ったものではなかく、あくまでも専門家へ診せることを目的としていた。 目的は明確で、方法は分かりやすくシンプル。 そして、色々と大雑把。 不安も残るが、この計画の概要を朱莉に話した時、彼女は諸手を挙げて賛成した。 俺と俺の家族に感謝の言葉を延々と並べ、よろしくお願いします、と、期待のこもった深い礼を見せた。 作戦の始動は、もう、間もなくだ。
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